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神代

太陽に、月に、そして神々に。
祈りとは、純真無垢な想い。
神代の舞台は 神秘の島 姫島から始まる。

 大分県の北部にある空の玄関口、大分空港を出発して、美しい海を眺めながら国東半島の北に車を走らせる。このエリアは千年以上もの歴史の足跡が数多く残る、時をめぐる旅が楽しめる場所。どんな時間が流れていくのだろうと心を躍らせながら進むと、右側に島が見えてきた。この島は「姫島」と言い、多くの神話が眠る神代の島である。

 青い瀬戸内海に抱かれた姫島は、古事記によるとイザナギとイザナミの二人の神から生まれたと伝えられている。
 姫島の名前の由来となった「比売語曽社」には、意富加羅国(今の韓国南部)からたどり着いたお姫様が比売語曽の神になったと日本書紀に記されている。この神社は恋愛成就や縁結びの神様で、女性の味方をしてくれる。境内の奥には大きな岩の間にひっそりと祠が守られるようにある。島の人たちはここでそっと手を合わせる。
 比売語曽のお姫様にまつわる言い伝えはまだほかにも。お姫様が手拍子を打って湧いたという「拍子水」や、お姫様が柳の楊枝を逆さにさすと柳の芽がでたという「逆柳」などの「姫島七不思議伝説」を抜きにして姫島は語れないというから、お姫様の物語をたどりながら、じっくりめぐってみたいと思った。

神代のルーツ宇佐神宮へ

 国道10号線を進むと、開けた街並みに広大な杜が見えてきた。神代の時代、宇佐の地に舞い降りた八幡神を祀ったのが、この宇佐神宮である。

聖地を歩く。

 神橋を渡ると、色鮮やかな朱色の大鳥居が出迎える。その先に見える参道はまっすぐと奥の杜の入り口へと導き、ここから神域へと入っていく。手水舎までの長い参道に沿って、当時は大規模な寺があったが、廃仏毀釈により、その姿は消えてしまった。今は宝物館や能舞台、たくさんの社殿が並ぶ。宝物館前にある初沢の池は、京都の広沢の池と並び、日本の三沢の池の一つになっていて、6~7月には見事な蓮の花が咲き誇り、極楽浄土のような世界が広がる。
 手水舎で身を清め進むと、その一帯を天然記念物のイチイガシが生い茂る。太陽を遮り、緑一色に包まれる異世界。パワースポットなんて言葉に収まりきらない、そんな力を強く感じる。
 広い杜を抜け、いよいよ上宮へ。国宝である本殿、一・二・三之御殿を囲む、宇佐神宮を象徴する建造物の一つ、南中楼門が見える。宇佐神宮の本殿は、八幡造という建築様式で、檜の皮を重ねて造られた檜皮葺である屋根が特徴的。
 宇佐神宮の参拝方法は、全国でも珍しく「二拝四拍手一拝」。三つの御殿にしっかりと手を合わせる。最後に、三之御殿の前にある御神木の大楠に両手をそっと当てて、願い事をもう一押ししよう。  上宮から下宮へ降り、奥の方に緑が生い茂る場所が見えてきた。そこには「弥勒寺跡」と書かれた案内図。奈良時代に神仏習合の起源であるお寺があった場所である。この弥勒寺には高僧が集まり、流行の病などの大きな災いから救うための神事「放生会」を担っていた。 その神事に携わるためには「六郷満山」での修行が必要だったという。
 修行僧たちが勇んで行った六郷満山の地、国東半島へ。神と仏の力を授かりに、神代から古代へとタイムトリップする。

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